歯科口腔外科という名称を初めて目にする方もいらっしゃるかと思います。歯科口腔外科はお口の中だけではなく、顎、顔面に発生する疾患をすべて診療する診療科です。
私が卒業しました(国立)東京医科歯科大学歯学部は、同級生の中で親が歯科医師という学生は数人しかいなかったため、歯科医療に対する先入観が無いものがほとんどでした。
そのため、家業を継ぐという考えの者は少なく、それぞれ自分の好きな分野を極めようという自由な雰囲気があり、私は口腔外科学、特に癌の研究をしようと、臨床も学べる口腔外科の門を叩きました(学位論文は癌がテーマでした)。
私が口腔外科の研修を始めました約20年前の歯学部附属病院の病棟では、唇顎口蓋裂という疾患の生後数ヶ月の乳児から口腔癌の終末期の方々と、様々な疾患と年齢層の患者さんが入院治療を受けておられました。乳児から老齢の患者さんの栄養管理・手術前後の全身管理、口腔癌終末期の患者さんの治療・ケア、手術室で手術、外来で診療、そして研究と、今の時代では考えられないことですが、勤務時間や休日という概念もなく早朝から深夜まで休み無く駆け回り、諸先輩から暖かく時には厳しく徹底的に指導を受けました。口腔外科は当直もありましたので、深夜に救命センターで診療をし、当直明けは朝から診療と、12年間もそういう充実した(?)生活をしてきました。一方、一般病院や医学部付属病院では一歯科医師として普通の虫歯治療も多く行ってきました。また、他科での研修の機会にも恵まれ、麻酔科では全身麻酔・全身管理という厳しい指導を受け、放射線科では口腔癌の放射線治療を学びました。本当に多くのことを学びました。更には多くの癌終末期患者さんから人生や死生観を伺いましたし、死に立ち会い、ご家族にご臨終を宣告するという辛い体験も数多くしてきました(歯科医師は自分の担当の患者さんの死亡診断書も書けましたし、輸血等も行えたのです)。
歯科開業医になるには無駄な遠回りだと揶揄されることもありますが、本来開業医というのは地域医療の最前線に立っているので、そこで的確な診断を行い、いずれの後方施設にご紹介するかどうかの判断ができるようになったことは本当に貴重な経験だったと思っております。
これまで学んできました多くのことを地域医療に役立てるよう、当院では虫歯や歯周病(歯槽膿漏)の治療、入れ歯の作成、インプラント治療から様々な口や顎や顔面に発生する病気の治療まで、皆様に信頼され、安心してご相談頂けるかかりつけの歯科医となれるよう心がけております。
私は中学・高校と、地元埼玉で育ちました。
高校は東浦和にある浦和明の星女子校等学校で、南浦和は当時通学で乗り換え駅として利用しておりました。
そのような土地でクリニックを開院したことは、これも何かの縁と思っております。
大学時代は緑豊かな東北の都、仙台でのびのびと過ごしました。
大学で様々な分野の授業を受けるうちに、口腔外科という分野の奥深さにひかれ、卒業後の進路は迷わず東京医科歯科大学の口腔外科を選択しました。
私が入局した当初は、まだ診療科が今ほど細分化されておらず、しかも口腔外科は他科の難治症例を任されることが多く、様々な症例を経験することができました。難しい抜歯はもちろん、顎関節症、口腔粘膜の疾患から口腔癌に至るまで、外来・病棟ともに勤務し、それぞれ専門の諸先生方に教えていただいた知識が、現在の日々の診療に役立っております。
特に口腔領域の原因不明の疼痛に関しては専門外来での研修の機会もあり、非常に貴重な経験だったと思っております。
その間に2男1女の三人の子供にも恵まれ、今は診療と子育てで、毎日奮闘しております。子供を持ったことで、検診にいらっしゃるお母様方の不安や、心配事が同じ母親の目線で一緒に考えられるようになったと自負しております。
これからも患者様のお口の健康管理とともに、不安なこと、困ったこと など、気軽にご相談頂けるようなクリニックを目指していきたいと思っております。